阿蘇長陽大橋

平成28年4月に発生した熊本地震により多数の橋梁が通行止めとなり,その内の一つである長陽大橋ルートは,南阿蘇村の立野地区と中心部を直結する最短ルートとして,地域住民の重要な路線であり,早期の開通が望まれました。

被災した阿蘇長陽大橋は,UAVや橋梁点検装置による画像解析,橋梁外面や中空橋脚内のひび割れ調査を実施した結果をもとに,補修による復旧が可能であると判断されました。

復旧工事は大規模災害復興法の直轄代行により実施され,平成29年8月27日、工事期間わずか1年4か月という短期間で応急復旧工事を完了し,長陽大橋ルートは開通しました。

【提供】(株)富士ピー・エス

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以下,「橋梁と基礎」2018年11月号からの引用。

平成28年4月に発生した熊本地震により,大規模な土砂崩れにより崩落した阿蘇大橋をはじめとして,多数の橋梁が通行止めとなりました。阿蘇長陽大橋は橋長276mのPC4径間連続ラーメン箱桁橋で,熊本市内と南阿蘇村を繋ぐ村道栃の木~立野線に位置しています。この路線(長陽大橋ルート)は,南阿蘇村の立野地区と中心部を直結する最短ルートとして,地域住民の重要な路線であり,早期の開通が望まれました。

阿蘇長陽大橋の被災状況は,橋台部が柱状節理の発達した急傾斜地に位置していたため,斜面崩落に伴ってA1橋台が大きく沈下しました。また,P3橋脚の中間高さ位置の中空断面部に貫通ひび割れが発生する等橋梁全体の損傷は甚大でした。

橋台付近のボーリング調査や現地調査により地盤の緩みの範囲を設定し,橋脚や主桁に対しては,UAVや橋梁点検装置による画像解析,橋梁外面や中空橋脚内のひび割れ調査を実施した結果をもとに,補修による復旧が可能であると判断されました。

基本復旧方針は,震災前の性能に回復させ,さらに次に同様な地震が発生した場合の機能回復に要する期間を短縮できることとしました。震災前の性能を回復させるため,両橋台の再構築,P3橋脚中空部のコンクリート充填,橋梁全体の炭素繊維シート補修等を行いました。また,地震後の機能回復に要する時間を短縮するため,A1橋台を多点支持のラーメン構造とし,P3橋脚の充填コンクリート内部の点検が迅速にできるよう充填コンクリートの鉛直方向に点検孔を設置しました。復旧工事は大規模災害復興法の直轄代行により実施され,平成29年8月27日、工事期間わずか1年4か月という短期間で応急復旧工事を完了し,長陽大橋ルートは開通しました。

本工事で実施した技術は、橋梁技術の発展に大きく寄与すると評価され、土木学会田中賞を受賞しました。